<第3回> 代表的な赤潮プランクトン
我が国沿岸域において赤潮を発生させたプランクトン種は 60 以上知られている。それらのなかで代表的な有害赤潮プランクトンを写真に示した。ラフィド藻に属する Chattonella antiqua、C. marina、C. ovata(合わせてシャットネラと称される)およびHeterosigma akashiwo(ヘテロシグマ)、渦鞭毛藻の Noctiluca scintillans(夜光虫)、Karenia mikimotoi(カレニア)、Heterocapsa circularisquama(ヘテロカプサ:二枚貝を特異的に斃死させる)、および Cochlodinium polykrikoides(コクロディニウム:現在は Margalefidium 属が提唱されている)が重要な有害赤潮プランクトンとしてあげられる。
最も大きい漁業被害を与えてきたのはシャットネラであり、渦鞭毛藻のカレニアとヘテロカプサがこれに続く。コクロディニウムも重要であるが、本種は特に韓国で猛威をふるい養殖魚類の斃死被害が著しく大変に恐れられている。夜光虫とヘテロシグマは、赤潮の発生件数は著しく多いが、魚介類の斃死被害を与えることは稀である。瀬戸内海の播磨灘において1972年に発生したシャットネラ赤潮(C. antiqua)により、史上最大の 71 億円にものぼる養殖ハマチの斃死被害(1420 万尾斃死)が起こった。これを契機として「播磨灘赤潮訴訟」が提訴されたのは、あまりにも有名な話である。
次回以降、代表的な赤潮プランクトンについて、主として生物学的な説明を概略的に加えていく予定である。