基礎理論

 沿岸内湾海域において発生する赤潮・貝毒は、水産生物の斃死や毒化を引き起こすことから、これらの原因となる有害有毒プランクトンの増殖抑制、または低減が対策の目標となります。しかし、既に大量発生した有害有毒プランクトンを除去することは科学的にもコスト的にも非現実的です。湖沼のアオコも同様です。以上から、生物を活用してこれらの除去・抑制を行い、赤潮や貝毒、アオコ等の発生リスクを低減することを基本としています。

対策の工法としては現在
①海底耕耘による水柱への珪藻添加
②藻場やアマモの造成による赤潮増殖制御(殺藻細菌の活用)
③薄層浚渫によるシスト除去

 以上の3方法を検討しています。

アマモ場・藻場の効果

 アマモや海藻の表面には膨大な数の殺藻細菌が付着しており、これらが赤潮・貝毒の原因プランクトンを殺し、あるいは増殖阻害することが近年の室内試験や現地調査研究で明らかにされました、赤潮・貝毒対策において藻場やアマモ場の造成が具体的な方法として検討される可能性が生まれました。

調査計画

 土木的手法を伴う対策は公共事業で行われることが想定されます。そのためまず施工海域の自然条件や社会条件を把握し、被害の経済的算定、抑制目標規模、基本工法検討を経た後、費用対効果算定など事業性を評価します。具体的な施工計画では施工量、施工箇所、工法、処理方法、環境保全対策などの具体的な内容を検討し、施工後には効果と持続性を確認します。

調査の内容、実施

 特に重要な調査は赤潮・貝毒・アオコの分布実態把握、および被害と効果の正確な算定です。赤潮・貝毒・アオコのシストは高密度域において選択的に除去するため、シスト分布の計測精度が重要であり、湾全体の平均密度の評価に大きく寄与します。次に赤潮・貝毒の正確な被害算定においては,養殖魚の斃死による直接的赤潮被害と出荷停止による貝毒被害、風評被害等も含めた社会的経済影響を含めることも重要です。さらにシスト除去のための薄層浚渫には底質改善も行われるため、底生の水産生物の生産増大、貧酸素水域の改善も副次的なものとして加えることが可能です。