会長挨拶
平成30年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、水産政策も「適正な資源管理と水産業の成長産業化の両立」にむけた大改革に舵を切りました。このなかで、成長産業化の柱の一つとして養殖業の振興が位置付けられています。
養殖業の振興には、その基盤として、養殖魚にとって安心して成長できる静穏な水域と良好な生息・海域環境が必要です。しかし、これまでの養殖業を振り返ると、静穏域における赤潮被害などが多くみられ、これら対策の両立は難しく、また、赤潮対策も生け簀の移動や餌止めなど発生後の対策が主でありました。
このため、本研究会では、赤潮そのものの発生を防ぐことに視点をあて、生物学と土木工学との連携による水産工学的立場から、薄層浚渫や海底耕うんによる赤潮原因プランクトン等の除去、藻場から放出される殺藻細菌などを利用した良好な養殖環境づくりに向けた対策を研究していきたいと考えています。
環境維持保全工法研究会会長
(一社)全日本漁港建設協会会長
岡 貞行
環境維持保全工法研究会への期待
このたび、環境維持保全工法研究会が設立されました事を大変嬉しく思います。
私は永年、 赤潮や貝毒の原因となる有害有毒プランクトンの研究を行って参りました。そして、赤潮や貝毒の発生機構を基盤にした発生予知、さらに発生予防と防除を目指しています。
現在、養殖は安定的な水産物の供給において重要性を増していますが、 赤潮や貝毒による被害は深刻なままです。そこで環境に優しく実効性のある有害有毒プランクトンの発生予防と防除が望まれています。赤潮対策においては生物学的制御が環境に優しいと期待されますが、具体的に対策を施すには土木的あるいは工学的なアプローチが必要と思われます。土木工学的アプローチのみでは自然の大きなスケールの前には全く無力と考えられますが、生物学的な根拠を持つ対策との組み合わせにより 、大きな可能性が開けてくるでしょう。
環境維持保全工法研究会による環境に優しい技術の開発は、環境に優しい赤潮対策技術の開発に資するものと期待しております。
北海道大学名誉教授
今井 一郎